日本のキリスト教と隠れキリシタン
キリスト教が日本において大きく布教を開始したのは、昭和20年代のことでした。1549年にフランシスコ・ザビエルが日本にやってきて、日本に正式なキリスト教の伝来がありましたが、戦国時代に、一部の大名の支援のもとで布教が始まったものの、西欧諸国の植民地化政策の尖兵としての側面があり、日本人を労働力として海外に売り飛ばすような行為を盛んに行ったので、豊臣秀吉、徳川家康らはキリスト教を禁教としました。その結果、隠れキリシタンとして、その命脈をわずかに保っていたキリスト教でしたが、昭和20年代になると世の中の状況は変わりました。現在、日本では人口の1パーセントがキリスト教徒です。日本におけるキリスト教の内訳はどのような状態になっているかというと、プロテスタントが、60万9600人と最大です。カトリックは、44万300人とこれに続きます。そして、東方正教会が1万200人です。プロテスタントは、ルターによって創始された教えで、新約聖書を聖典としています。
これを一般の会社員などと比較して少ないと考えるのは早計です。なぜならば、住居費、光熱費、車の維持の費用や通信費用まで教会負担で処理されるからです。
日本のカトリックとプロテスタントの違い
カトリックは正式にはローマ・カトリックといいます。こちらは伝統的なキリスト教であり、新約聖書と旧約聖書を聖典としています。東方正教会というのはロシアのほうに広まったキリスト教です。それぞれに教えの内容が一部違いますが、イエスキリストを信仰するところが共通しています。最も信者数の多いのが長崎県です。キリスト教は、東方正教会、カトリック、プロテスタントの三つに大きく分けられます。この他にもたくさんの少数の宗派があります。日本のキリスト教徒の総数は106万
日本のキリスト教徒は、2012年の集計によると、106万170人です。これは日本総人口の約1%です。長崎県は、人口の4.2%、6万2000人と最大の信徒数です。日本で最初のキリシタン大名であった大村純忠が、フランシスコ・ザビエルの所属するイエズス会に長崎を寄進したため、ここが日本におけるキリスト教流布の中心となった歴史に由来しています。キリスト教徒になろうとする日本人は、一般的には「洗礼」の儀式を受けます。全身を水に浸したり、頭部に水を注いだりします。全身を水につける場合は、河川や湖で行う場合もあります。全身を水に浸すものを「浸水」といい、頭だけに水を注ぐものを「潅水」といいます。頭に水滴をつけるだけの「滴礼」という方法を用いる場合もあります。日本の総理大臣の13%がキリスト教徒
洗礼を受けた人のリストは、洗礼台帳あるいは教籍簿などと呼ばれ、教会が管理します。洗礼を受けるのには年齢制限その他の条件はありません。ところで、日本の政治家にはキリスト教徒が多いです。そのためなのか、日本の総理大臣の中にもキリスト教徒が多いのです。クリスチャンであることがわかっている歴代首相は、原敬、吉田茂、片山哲、鳩山一郎、大平正芳、麻生太郎、鳩山由紀夫、などすべての首相のうち13パーセントが、キリスト教を信じていたのです。なぜ、このような傾向がみられるのでしょうか。一つには、日本におけるキリスト教は、インテリ階級に主に広がったという特質があげられます。キリスト教を信じる者は収入の10分の1を献金しなさい
内村鑑三に代表される「無教会派」も東京大学の教授たちや、東京の富裕層に広まっています。それが政界や財界にも影響していたのでしょう。旧約聖書の中にあるマラキ書という章に、キリスト教を信じる者は、収入の10分の1を献金しなさいと記されています。これを什一献金(じゅういちけんきん)といいます。このため、宗派によっては、厳しくこの献金を指導しているところもあります。キリスト教が豊富な資金力をもって教会や宗教学校を運営できる秘密はこんなところにもあるようです。日本のキリスト教徒とミッションスクール
日本のミッションスクールといえば、上智、聖心、白百合、南山、などのカトリック系が有名です。2017年四月に亡くなった渡部昇一氏は、上智大学名誉教授で、百冊を超える著書があり、その15万冊を超える蔵書は個人としては最大規模として世界的に知られていました。渡部昇一氏も日本においては明治時代にすでに、ミッションスクールが存在し、宗教学校にたいへん寛容であったことを評価していました。戦前から日本にはミッションスクールがあった
上智大学は、戦前からあるミッションスクールですが、今では、日本におけるミッションスクールの代名詞のような存在になっています。プロテスタント系は、同志社、関西学院、立教女学院、東洋英和などがあります。これらのミッションスクールでは、毎朝、学校内の教会でお祈りを捧げるところもあります。聖心など、初等教育にも熱心で、イエスの教えを基礎とした人格教育にも力を入れているところが多くあります。キリスト教系の幼稚園も日本各地にありますが、そこに通う子供達は家庭がキリスト教徒ではない家がほとんどです。日本はミッションスクール生徒が必ずしもキリスト教徒ではない
学校ではキリスト教系であっても、それがきっかけで洗礼を受けるところまではいかないのが日本人の特徴です。日本では、神道、仏教、キリスト教などいろいろな宗教を八百万の神々ととらえる風土がありますので、学校に通学することがそのままキリスト教徒になることにはつながらないようです。日本でいうカミとは神社にいる神はもちろん、人間でも自然でも、畏敬すべき異能のものをすべてカミと呼ぶのだと、本居宣長も述べています。一神教の考える神の概念と、日本の伝統的な感性は大きく異なっているのです。日本のカトリックの最大の規模の教会は聖イグナチオ教会
カトリック系で最大の規模であるのが東京都の四ッ谷駅のそばにある聖イグナチオ教会です。1万6千人の信徒を抱えています。プロテスタント系では、多くのプロテスタント教派を束ねる日本基督教団が運営する銀座教会が最大です。銀座四丁目にあります。そして東方正教会では、ニコライ堂が最大です。東京都の神田駿河台にあります。このような大きな教会もある一方、個人が運営するものもあります。プロテスタントで多いものですが、自宅の一部を教会として使用する「開拓伝道」という仕組みです。この場合、個人が所有する建物を使うために、宗教法人法の制約があり、教会とは認められず、税制優遇措置が受けられません。カトリックには司教、枢機卿、教皇の役職がある
カトリック系では、司教という役職があります。これは、各司教区を監督する役職です。全世界に司教区が定められています。この司教の役職は、ローマ教皇から任命されます。そして日本には12人の司教が存在しています。全世界にちらばるすべての司教は、五年に一度、ローマ教皇に謁見する決まりです。そして、初代教皇であるペトロのお墓に詣でるのです。ペトロはイエスの最初の弟子であり、殉教したと伝わっています。司教よりも上位の役職には枢機卿がありますが、日本人には現在、枢機卿は存在していません。過去には五人の日本人が枢機卿に選ばれています。プロテスタントの牧師は信者と対等の存在
ところでプロテスタントは、牧師と信者は対等と考えられています。これを「万人祭司」といいます。旧約聖書にあるマラキ書の記述、「収入の十分の一を献金せよ」に従い、厳しく、献金を指導する教会もありますが、カトリックなどでは、収入の3パーセント以上を目安にしているところもあります。ほかの宗教にはない、収入に対する割合での献金指導は、キリスト教に特有のものです。日曜日のミサでは、献金を求めるバスケットが、回ってきます。参列者はそのバスケットの中にお金を入れていくのです。信者に毎月の会費を納めるように定めている教会が多い
日本の場合、欧米とは違って、このバスケット献金では不思議とお金があつまりません。神社仏閣でのお賽銭の感覚がどうしてもあるので、小額の小銭しか入れない人が多いためです。それゆえに、信者には毎月の会費を払わせるところが多いです。月定と呼ばれる教会維持費がそれです。振込みさせたり、持参させたり、いろいろな方法で献金を集めています。もちろん、教会を維持し、聖職者の生活を守るためにこれは必要なのです。会費を毎月、振込み形式で集金するところは収入が安定しています。日本のキリスト教の教会の数はおよそ九千二百
日本には9212の教会が存在しています。2012年の集計です。東京の四ツ谷駅に近い聖イグナチオ教会は、1万6千人の信徒を抱える日本最大の教会です。聖イグナチオ教会はカトリック系です。毎週日曜日になると、4000人が礼拝に参列します。ミサも日本語だけではなく、英語、スペイン語などで行われます。東京は人口も多く、キリスト教徒も多いです。また外国人も多く住んでいることも一つの背景です。日本のカトリックとプロテスタント
プロテスタントの牧師は平均年収が276万円だと発表されています。多い牧師は1000万円を超える場合もあります。これは日本基督教団の牧師のデータですが、牧師の給与は「謝儀」と呼ばれています。一人当たりの平均は年間276万円だそうです。もちろん、個別に違いますので、多い人もいるのです。これを一般の会社員などと比較して少ないと考えるのは早計です。なぜならば、住居費、光熱費、車の維持の費用や通信費用まで教会負担で処理されるからです。